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ジムさんのトレーラーで 

2009年7月29日 フェアバンクスに戻ります。

 気だるい朝・・・。プルドーベイ・ホテルの食堂で、モソモソと朝食を済ませます。時計は5時。まだまだ寝てても良い時間帯だけど、一度寝ると、確実に寝坊しそうなので、もう寝ません。私は7時ちょうどに、Carlileという運送会社に行かねばならんのです。

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写真1)午前6時の太陽。夜通し、地平線の上を転がっていた太陽が、徐々に上昇を再開しました。



 プルドーベイには3つの運送会社のベースがあります。そのうちのひとつがカーライル(Carlile)。その会社は、自転車付きのヒッチハイカーを受け入れてくれる、親切な会社なんだそうです。
  7時ちょうど、自転車を携え、オフィスに向かいました。コーヒーの香りが漂うオフィスに入ると、解っていたかのように、女性が応対してくれました。この人がアンさんだな? 彼女が、ヒッチハイカーの窓口。陽気な会話をしつつ、手際よく『同乗中の事故の責任は追及しません。自転車が壊れても文句は言いません』という誓約書にサインを済ませます。これで手続きは終了。あとは、アンさんが、私を受け入れてくれるドライバーを見つけてくれるまで、私はホテルで待機です。

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写真2)カーライルの操車場。今朝がた、5~6台のトレーラーが発ちました・・・。これから出る車はあるでしょうか・・・?

 8時前、ホテルのロビーで船を漕いでいた私のところに、先ほどのアンさんがやって来ました。「あなた、ラッキーね!すぐに車が見つかったわよ!」 喜ぶ私と泥だらけの自転車は、ジムさんというおじさんが引き受けてくれることになりました。
 早速、ジムさんの車に向かいます。道中、何百台と大型トレーラーは見ましたが、そのドライバーとじっくり話すのは初めてです。極北の過酷な道を走るドライバー・・・、『無骨で話しにくい人だったらどうしよう?』と心配していましたが、ジムさんは穏やかそのものの、素敵なおじさんでした。

 愛車・自右衛門号は、トレーラーの荷台の後ろのスペースにしっかりと固定しました。猛烈に砂埃と泥を被る場所ですが、贅沢は言えません。ジムさんは「本当にここでいいの?」と気にしてくれますが、フェアバンクスに戻って洗えば済む話です。
 8時半、フェアバンクスへ向けての12時間の移動がスタート。走り出して間もなく、ジムさんは、携帯電話で奥さんと話し始めました。携帯が通じるのは、デッドホース周辺のみ。毎日、走り出す前に声を聞かせるのが日課なんだそうです。

ジム 「おはよう、ハニー。今日はね、僕、素敵な同乗者を連れてるんだよ。自転車で世界一周の旅をしてる、ココ(私のニックネーム)だよ。アジアとヨーロッパとアフリカで、もう3万マイルも走ってるんだって。ダルトン・ハイウェーも走ってきて、これからフェアバンクスまで送ってくのさ。」

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写真3)プルドーベイを右手に見ながら、ツンドラの大平原を走り出しました。

 ジムさん一家は、ミネソタ州に暮らしています。彼は、このダルトンを走り出して丸2年。それ以前は、期間限定で走りに来ていたそうですが、2年前から、単身赴任でダルトンハイウェー専門ドライバーとなりました。一般的に、自宅で過ごす時間が少ない長距離トラックの運転手ですが、ジムさんは、年に3回の休暇でしか、自宅に帰ることはありません。
 彼の寝床はこのトラック。運転席の後ろには、大きなベッドと電子レンジ、衣類棚などがあり、小さな家のようになっています。車内ははとても清潔。ジムさんの人柄がうかがえます。ほんと、穏やかで、律儀な人です。

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写真4)アティグン峠の頂付近。サングラスの下の優しい目は、路面をしっかりと見つめています。

ジム 「僕はね、この道が好きになったんだ。大自然も、ここを走る仲間たちも良い。確かに、ここは北米で一番危険なハイウェーだけど、それだけに稼ぎも良い。でも、僕は稼ぎ以上に、ここを走る幸せみたいなもんを感じてるんだよ。」

 正直なところ、世界を3万マイル走行済みの私にとっては、“北米で一番過酷な道”は、それほど過酷には感じられませんでした。が、私が体験したダルトンハイウェーは、その一面でしかなかったようです。超重量のトレーラーを引くトラックは、ちょっとのハンドル操作ミスで、大きくバランスを崩します。横転や転落事故で命を落とすドライバーも少なくはないようです。
 長い冬の走行も大変です。
ハイウェーは年8ヶ月以上雪に覆われます。厳冬期には、氷点下40℃くらいまで下がりますが、雪の上の走行には問題ありません。パウダースノーは、柔らかい土のように、しっかりとタイヤに絡みます。ジムさんいわく、「夏の方が、路面がデコボコしてて大変だよ」とのこと。でも、地吹雪になると大変です。トレーラーのボンネットの鼻すら見えなくなることもしばしば。ホワイトアウトしてしまうと、天候の回復を待つ他ありません。昨冬は、3日間、動けなくなったこともあるそうです。

 積み荷は、石油採掘基地で使う工業部品や、食料など、様々。過去には、米軍の護衛の元、謎のコンテナを運んだこともあるそうです。北極圏の米軍基地に届けられた、そのコンテナ・・・、ジムさんは、核兵器かも?と予想していましたが、実際に何だったのかは分かりません。
 冬場は運ぶ荷物が増えるんだそうです。近年、北極海沿岸の油田開発が活発化しており、沖合の島で新しい採掘基地の建設が進んでいるそうです。冬場は、海が凍り、島まで雪上車で資材が運べるようになるので、ジムさんたち・陸のドライバーも大忙し、というわけです。


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写真5)事故発見!

 ブルックス山脈の手前、ツンドラの丘陵地で横転したバイクを発見しました。運転者の姿は見当たりません。ジムさん、慌ててトラックを降り、周囲を探しまわります。このバイク、私が昨日見たバイクです。この道を走るバイクのほとんどが、BMWのオフロード車なのですが、これはいわゆる“アメリカン”バイクです。オンロード用で、このような悪路には向きません・・・。それゆえに、私の記憶に残っていたのです。

ジム 「ドライバーが心配だね。事故後のパニックで、あてもなく歩き出して、そこらへんで倒れているかも知れない・・・」

 ジムさんと私、そして後ろからやってきたトラックのドライバー3人で、周囲を探しましたが、倒れている人はいませんでした。その後、無線で確認したところ、そのドライバーは今朝早くに事故を起こし、通りかかった車でポンプステーション(パイプライン保持のための施設)に運ばれ、ヘリコプターでフェアバンクスに搬送されたんだそうです。下半身の感覚がなかったそうで・・・。酷い事故だったようです。

 ジムさんにとって、この道を行き交う人はみな仲間。彼は、すれ違うドライバー全員にピースサインを送っています。大型トレーラーのドライバーはもちろん、観光客の四駆にも、バイク乗りにも、そして自転車乗りにも。大型トレーラーのドライバーたちには、それぞれ“お決まり”のサインがあるらしく、手を振る人、手を上げるだけの人、ピースをする人、ピースを振る人、指を振る人、などなど。すれ違いざまの一瞬で、ドライバーの顔が認識できなくとも、そのサインで誰だか解ることもあるのだとか。

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写真4)社内で撮影。運転席も助手席も大きくて、車内には20以上の計器がありました。

 トラックには、2種類の無線が搭載されており、ジムさんはすれ違ったドライバーや前後を走るドライバーと、時折会話をしています。道路状況、最近の面白い話、休暇の予定、同乗者(私)の紹介、などなど。
 シートは快適そのもの。前後左右、エアサスペンションが効いていて、激しい路面からの突き上げを感じることもありません。ゆっさゆっさとゆっくり揺れるそのシートは・・・、最良のゆりかご。昨晩、ほとんど寝ていない私は、ジムさんには失礼ですが、ほどんど爆睡していました。

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写真5)中間地点・コールドフットまであと少し。

 昼食は、コールドフットのレストランで済ませました。せめてものお礼にと、私が昼食代を支払いました。「好きなだけ食べて下さい!」という私に、彼は「じゃぁ、好きなものを食べよう!」と、9ドルのハンバーガーを食べただけでした。カーライルの事務員・アンさんからは、「ドライバーには心付け程度のお礼はしてね」と言われてましたが、こんな昼食だけで、ホントに良いのでしょうか・・・?

 昼食の後も、長い長い走行。私が7日かけて走ってきた道を、12時間で戻るわけです。寝ては起きての繰り返しの私ですが、ジムさんは慎重な運転を続けます。時折、起きては、ジムさんとダルトンハイウェーの話で盛り上がります。「へぇ~、トラックの運転席から見るのと、自転車の上から見るのじゃ、見え方が違うんだね、面白いや。」とは、ジムさん。


 長いようで、短い12時間でした。まだまだジムさんとの時間については、紹介したいこともありますが、どこまでも長くなりそうなので、ここらで終わりにしましょうか・・・。


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写真6)午後9時半、フェアバンクス郊外のCarlileの操車場に到着。9月上旬、夏の休暇で2週間家に帰るそうです。その時をねらって、この写真を彼の自宅に送ることにします。

 ジムさん、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました☆
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